トイレの排水が飲める!炭の浄化力

 都市には公共下水道があって、生活雑排水をきれいに浄化してから川や海に放流しています。しかしながら、都市周辺の新興住宅地や農山村では下水道が整備されていないところがたくさんあり、トイレから流されるし尿や台所や洗濯機などから出る雑排水は垂れ流しか、簡単な浄化設備を通すだけで放流しています。

福岡県糟屋郡久山町は福岡市郊外の町です。この町は公共下水道を使わず、合併浄化槽(し尿と一緒に他の生活雑排水も処理できる浄化槽)を各家庭から事業所まで町全体に設置して、生活雑排水を飲めるくらいにまで浄化しています。

この町では、二十数年前から当時の町長・小早川新さん(故人)の方針で合併浄化槽を整備しました。小早川さんは自分たちの町から出る放流水で子供たちが泳いだり、ホタルや魚が生息したり、水田に入れても害のない水質にしようと、この方法を選びました。合併浄化槽は三段階の槽で出来ています。第一・第二の槽は嫌気槽と呼ばれ、ここには酸素がなくても生きられる微生物(バクテリア)が住みつきます。第三の槽は絶えず空気(酸素)を送り、攪拌する好気槽(バッキ槽)です。この槽には酸素がなくては生きられない微生物が住みつきます。この二種類の性質の異なる微生物の働きを利用して有機物(汚れの物質)を分解するのです。合併浄化槽は単独浄化槽に比べて、生活雑排水の汚れを約8分の1に減少できるといわれています。

汚水を浄化するポイントは浄化材の選び方です。多くの場合小石を使いますが、久山町では小石に代えて炭を利用しました。それも福岡から遠く離れた岩手産のミズナラ黒炭が使われています。岩手産の黒炭は炭質が均一で、硬く、流水の中に長く放置しても、砕けたり、流れたりしないからです。

炭は多硬質で内部表面積が大きく、微生物が炭の内部に住みついて増殖します。その浄化力は、炭の表面積に比例して小石の1000倍以上にもなります。また、小石を使った場合は、毎年、その表面を掃除しなければなりません。炭は多量の微生物がその役割を代行してくれるので、掃除の必要がありません。

小石を使った場合、水質の汚れの目安となるBOD(数値が小さいほど浄化度が高く水がきれい)はは20ppmくらいですが、炭を使うとBOD2.03.0ppmまで浄化でき、水道水と同じくらいきれいな水質になります。

久山町の小早川さんは、浄化槽を見学に訪れた人々に、浄化槽から出た放流水を汲み取り、無色無臭であることを示して、自ら飲んで見せたものでした。

小石を使う浄化槽は、今から約200年前、産業革命による工業化でロンドンのテムズ川が汚くなったときに開発された技術です。わが国でもこの方式を取り入れ、いまだに慣習的に使用しています。最近は小石に代わるさまざまな浄化材が開発され、利用されていますが、まだ小石を使う方法が主流です。

日本で考案された炭を用いる画期的な浄化方法は、製炭産業にたずさわる人々はもとより、河川の浄水や生活雑排水の浄化事業にたずさわる人々の間でも、まだ余り知られていませんが、その効果は科学的にもはっきり証明されています。

竹炭は木炭より表面積が大きく、硬質で、吸着力にもすぐれています。今後、河川や湖沼の水質はもとより生活用水の浄化材としても、大きな期待が寄せられています。


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