もっと知ろう!石けんのこと
「石けんと合成洗剤」長谷川 治
著
発行所 合同出版株式会社 より抜粋
その昔、石けんは木灰(または海藻灰)と油脂とで作られていました。
アルカリが油脂を鹸化(けんか=石けんにすること)する作用がある
ためです。1790年、カセイソーダの製造法がフランスの化学者ニコ
ラス・ルブランによって発明され、工業的にアルカリが作られるように
なって以後、カセイソーダで石けんを作るようになり、多量の石けんが
生産されるようになりました。石けんの普及は伝染病の予防などに貢
献しました。
このカセイソーダの製造法は、ルブラン法、ソルベイ法、そして「電解法」
へと変わり、現在は海水の塩を電気分解して作られています。
カセイソーダは水酸化ナトリウム(NaOH)の通称で、近代化学工業の
基本的な原料の1つとして、紙・パルプ、繊維、染料、食品工業まで多
方面に使われています。
1997年度には国内で370万トン作られていますが(日本ソーダ工業会
調べ)、使い切れないので輸出されています。石けん製造に使われる
カセイソーダは生産量の0・2%とごくわずかです。
現在の「電解法」ではカセイソーダとともに、塩素や塩酸が副生されます。
この塩素を原料にしたさまざまな近代化学工業が起こってきました。塩
次亜塩素酸ソーダなどの消毒用、有機溶剤用、塩化ビニール・塩化ビニ
リデンなどのプラスチック原料などに使われ、1997年度は520万トン作ら
れています。
今、ダイオキシン問題で塩素の使用が問題になっています。塩化ビニール
、塩化ビニリデンの生産が縮小、または廃止されることになれば、塩素が
副生しないカセイソーダの製法(たとえばソルベイ法)へと転換されていくと
思われます。
余談ですが、グルタミン酸ソーダも食塩も同じ塩分ですので、食事をうす味
にして減塩しても、化学調味料をたくさんふりかけたのでは減塩したことに
はなりません。化学調味料(グルタミン酸ソーダ)に使われているカセイソ
ーダは、石けんの4倍も多いのです。