もっと知ろう!石けんのこと
「石けんと合成洗剤」長谷川 治
著
発行所 合同出版株式会社 より抜粋
洗濯という行為は、人類が衣服を着るようになってから始りますが、
最初の動機は宗教上の動機から始まったと考えられています。古来
から人類は、水を穢れ(けがれ)を落とす力を持った神聖なものとみ
なして、身体や衣服を洗うようになったといわれています。
やがて、衣服を長期間着用するという経済上の理由、保健衛生上の
観念も加わり、日常的に洗濯がおこなわれるようになりました。
原始的な洗濯方法には、手もみ洗い、振り洗い、足踏み洗い、振りつ
けあらい(木や石を使って洗う)、板もみ洗い(板の間にはさんで洗う)
たたき洗い(衣類を棒でたたき付けて洗う)といった方法があり、川、
泉、沼のほとりなどで洗濯がおこなわれました。これらの洗濯方法は、
汚れを溶かし込む水の性質と汚れを落とす物理的な力を応用したもの
です。洗剤、洗濯機が普及していない国々では、いまでもこれらの方法
で洗濯をしています。
いちばん古くから、「天然の洗剤」として利用されてきたのは灰汁(あく)
です。石けんの原料の一部でもあるアルカリは、それ自体が汚れを分
解する力を持っているのです。平安時代には、灰汁や米のとぎ汁、白
アズキやサイカチの実、ダイコンの汁やムクロジなども洗濯に活用され
ました。明治時代以降は、工業的に石けんが製造され、広く普及する
ようになり、石けん、たらい、洗濯板が洗濯道具になりました。戦後、
洗濯機が普及するまでは、どこの家庭でもこの3つの道具で洗濯をし
ていました。
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