もっと知ろう!石けんのこと
「石けんと合成洗剤」長谷川 治
著
発行所 合同出版株式会社 より抜粋
ヒトや動物の各器官は、互いに密接な連結を保って生命の維持に努め
ています。器官同士の連絡方法には、神経を経由する方法と、体液(
血液)を経由する方法とがあります。
体液を経由する連絡方法は、特定の臓器(脳下垂体、甲状腺、副腎皮
質、卵巣など)から特定の物質が微量分泌されて血液中に入り、体内
の他の器官に変化を促すようなやり方です。この微量分泌物質を「ホル
モン」といいます。体内で生成される「情報伝達物質」です。
地球上では長年にわたって殺虫剤のDDTや塩素系化合物のPCBな
どの化学物質が大量に使用されたために、ワニやカモメの卵がふ化し
ない、アザラシやイルカが大量死している、合成洗剤に含まれるノニル
フェノールによって魚がメス化しているなど、世界中で生き物に異変が
起き始めたといわれています(「沈黙の春」「奪われし未来」など)。
この異変の原因となった化学物質は、「環境ホルモン」(内分泌かく乱
物質)と総称され、疑わしい物質として、環境庁では70種類をリストア
ップしています。これらの物質が体内に取り込まれると、本当のホルモ
ンのように器官へ指令を出してしまい、それによって体内機能がかく乱
されてしまうのです。そのため「ニセホルモン」ともいわれます。
洗濯用合成洗剤にはLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウ
ム)や蛍光増白剤が配合され、合成シャンプーやリンス、化粧品には
BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、パラベンなどが配合されています
が、これらはノニルフェノールと似た性質を持っていて、環境ホルモン
作用を持つ化学物質ではないかと疑われています。
ノニルフェノールはPOEP(ポリオキシエチレンアルキルフェノールエー
テル)が環境中で一部分解されてできる化学物質で、代表的な環境ホ
ルモンのひとつです。POEPは、工業用洗剤や避妊薬、プラスチックの
添加剤としても使われています。