もっと知ろう!石けんのこと

「石けんと合成洗剤」長谷川 治 著
発行所 合同出版株式会社 より抜粋


江戸時代から微粒の白砂に竜脳(りゅうのう)や丁子(ちょうじ=クロー
ブ)などの薬物を混ぜた歯みがき剤が作られ、「歯みがき粉」として売
られていました。その後、炭酸カルシウムなどの研磨材に石けん、香
料などが加えられ、「粉歯みがき」として普及してきましたが、合成洗
剤が開発されてから、チューブ入り練り歯みがきが作られるようになり
ました。
日本では、現在、歯をみがく習慣が定着していますが、必ずしも虫歯
や歯周病が減っているわけではなく、むしろ戦時中の砂糖のない時代
に虫歯は少なく、食べ物の影響がいちばん強いといえるでしょう。
朝、AS(ラウリル硫酸ナトリウム)という界面活性剤が配合された歯み
がき剤で歯をみがくと、味を感じる舌の部分(みらい)に結合し、味覚を
マヒさせてしまいます。ですから歯みがきの後、お茶や食べ物の味が
わからなくなってしまうのです。
現在の歯みがき剤にはラウリル硫酸ナトリウムが2%配合されていま
す。台所用合成洗剤を0・03%に薄めて使うよう表示されていることと
比べると、66倍もの濃度になります。しかも、口に入れたうちの1%は
、口の粘膜から吸収されたり、飲み込まれたりしています。
最近、昔から使用されていた「石けん歯みがき」が復活してきたのは、
このような背景があるからでしょう。一時消えかかった石けん歯みがき
ですが、歯をみがいた後、食べ物の味が変わることがありませんし、
甘味料のサッカリンナトリウムや防腐剤なども含まれていないので、飲
み込んでも安心です。

追加情報
ラウリル硫酸ナトリウムはアルキルサルフェート(アルキル硫酸塩)ともいわれ、
ASと略称されます。高級アルコール系合成界面活性剤といわれますが、中味
が高級なのではなく、単に炭素数が多い(12個)アルコールという意味です。タ
ンパク質を測定する試薬に使われている化学物質で、タンパク変性が強いとさ
れています。

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