もっと知ろう!石けんのこと
「石けんと合成洗剤」長谷川 治
著
発行所 合同出版株式会社 より抜粋
1987年、主婦が風呂場の掃除中、「カビと取り剤」と「酸性の洗浄剤」
を同時に使用して、中毒死してしまうという事件がありました。調べて
みると、「次亜塩素酸ナトリウム」入りのカビ取り剤(塩素系漂白剤)と
、「塩酸」入りの酸性の洗浄剤(トイレの洗浄剤など)を一緒に使用し
たためとわかりました。
この二つが化学反応を起こし、塩素ガスが発生し、それを吸入したた
めに呼吸困難になり、急死するという事故でした。
塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム入り)は、塩酸、硫酸などの強
い酸に合うと塩素ガスが発生します。第一次大戦時にはドイツ軍が
塩素ガスを毒ガス兵器として使用して、死者5000人を出したことが
ありました。日本でも、1974年、四日市市の化学工場から塩素ガス
が漏れて、付近の住民1万6000人に被害を与えた事故がありまし
た。
塩素からは殺虫剤DDTやBHCなどが開発され、一時は世界中で使
用されていましたが、毒性のためにやがて禁止されています。
現在、次亜塩素酸ナトリウムを含む洗浄剤と酸性の洗浄剤には「ま
ぜるな危険」という表示をすることが義務つけられています。
また、塩素系漂白剤は酸性の洗浄剤とだけでなく、酢やジュースなど
とも反応して塩素ガスを出す恐れがあるので、注意が必要です。
衣類や台所で漂白が必要なときは、塩素系ではなく、「酸素系漂白
剤」を使用すると安全です。
酸素系漂白剤はアルカリ性で、酸性ではありません。酸素系漂白剤
は二つの成分からなっています。その一つの成分の「過酸化水素」は
酸素を出して汚れを酸化・分解し、もう一つの成分の「炭酸ナトリウム
」はすでに生分解(有機物が無機物の状態になること)が終了してい
るので、河川を汚すことはありません。