もっと知ろう!石けんのこと
「石けんと合成洗剤」長谷川 治
著
発行所 合同出版株式会社 より抜粋
「石けん」という言葉は二つの意味で使われています。「石けんで手を
洗いましょう」というような「洗浄剤」を指すばあい。もうひとつは脂肪酸
(油脂)とナトリウム(またはカリウム)が結合した本来の意味の「石け
ん」を意味するばあいです。
戦後急速に普及した合成洗剤は、「ソープレスソープ」(石けんでない
石けん)と呼ばれましたが、「逆性石けん」という言葉も、「石けんと逆
の性質の洗浄剤」という意味で、合成界面活性剤の一種です。
合成界面活性剤を配合していても石けん、ソープと宣伝している商品
がたくさんあります。
界面活性剤には陰イオン系、陽イオン系、両イオン系、非イオン系とい
う四種類があり、すこし専門的になりますが、水の中で界面活性剤の
「親水基」がどのように「かい離」するかによって分類されています。
石けんは水に溶かすと親水基が陰イオンになるのですが、陽イオン界
面活性剤は陽イオンとなって働きます。それで陽イオン界面活性剤は
「逆性石けん」と呼ばれるのです。
陽イオン界面活性剤としてアンモニウムが使われています。また、塩
素が使用されているので殺菌性はありますが、洗浄力はあまりありま
せん。
実際の手洗いでは、陽イオン界面活性剤では汚れが落ちず、また殺
菌効果も10〜20秒程度の手洗いでは効果を発揮しないので、あま
り役立ちません。石けんで手の裏表、爪と指の間をよく洗うほうがずっ
と効果的です。
しかし、こまったことには、陽イオン界面活性剤は川に流れ出た頃、じ
っくりと殺菌効果が出て、川の微生物を殺してしまうのです。微生物は
排水に含まれる物質を分解してくれる自然の浄化力の主役です。微
生物に対する毒性は、川の自然な浄化作用を狂わせてしまうことにな
ります。