もっと知ろう!石けんのこと
「石けんと合成洗剤」長谷川 治
著
発行所 合同出版株式会社 より抜粋
蛍光剤は、蛍光増白剤、蛍光白色染料ともいわれ、「驚きの白さに」「
輝く白さ」といったキャッチフレーズでコマーシャルに利用するために使
われてきたものです。
これは洗剤ではなく、合成染料です。蛍光剤は合成化学物質で、これ
が付着すると紫外線を吸収して青紫色の光を発するので物の表面が
青白く、輝いて見えます。
たいがいの衣類は、製造時に蛍光剤が付着処理されています。白い
ワイシャツなどでは蛍光剤で輝く白さに、色物の衣類では鮮やかな色
に見えるように処理されています。しかし、洗濯を繰り返すとだんだん
蛍光剤がはがれてくるので、それを補うために合成洗剤に蛍光剤を配
合しているのです。
洗剤で洗う目的は、汚れを落として、清潔にすることで、白く見せかけ
ることとは本質的にちがいます。合成洗剤に蛍光剤が配合される目
的は、汚れ落ちの弱さを蛍光剤でカバーするというトリックです。
「食品衛生法」では蛍光剤を紙ナプキンや食品の包装紙などに使うこ
とを禁止していますし、また日本薬局方ではガーゼ、包帯、脱脂綿な
どへの使用を禁止しています。蛍光剤は発ガン性や環境ホルモン(
内分泌かく乱物質)の疑いが持たれています。
蛍光剤は下水処理場でもほとんど分解されないので、処理場から出
てくる水が流れている川に「紫外線ランプ」(ブラックライト)を当てると、
青白く光る様子が見られます。深刻なのは、蛍光剤入り合成洗剤など
のために、本物のホタルが、姿を消そうとしていることです。逆に、偽
物のホタル=蛍光剤が日本の河川でわが物顔で増えているとは、な
んと皮肉なことでしょう。
石けんには蛍光剤は配合されていません。このため石けんで洗濯し
たとき、生地本来の色に戻っていくため衣類が白く見えず、「黄ばんで
いる」と誤解されることがあります。しかし、兵庫県生活科学研究所で
の洗浄力テストでは、合成洗剤より石けんのほうが洗浄力がよいとい
う結果が出ています。