もっと知ろう!石けんのこと
「石けんと合成洗剤」長谷川 治
著
発行所 合同出版株式会社 より抜粋
家庭で洗濯に使用している合成洗剤を4倍の水で薄めると、その中の界
面活性剤の濃度は50ppm(0・005%)程度になります。(1回使用量
=水30リットルに対し、洗剤20グラム。洗剤の40%が界面活性剤成
分で、4倍の水で薄めると計算して)。
この濃度では、メダカは数十分たつと苦しみだして、やがて死んでしま
います。メダカはえらから水中の酸素を取り入れて呼吸していますが、
界面活性剤濃度が50ppmの水中ではえらの細胞が破壊され、血液中
の浸透圧調節が不能になり、死に至ると考えられています。
実験動物(このばあいはメダカ)の半数が、24時間以内にどのくらいの
界面活性剤濃度で死ぬかという値をTLm値といいますが、メダカの成
魚のTLm値は、陰イオン系界面活性剤のLAS(直鎖アルキルベンゼン
スルホン酸ナトリウム)で6ppm、ふ化したばかりのメダカでは1ppmで
す。
日本の河川の多くは、界面活性剤濃度が1ppmを越えていることが報
告されています。これではメダカが生きて、子孫を増やせる環境とはい
えません。その上、農薬などの影響を考えると、このままでは日本の小
川からメダカが絶滅する日は近いのです。
1983年、横浜市戸塚区のいたち川で白く濁った洗剤が流れ込み、コイ
が100匹以上死んだ事件は、当時大きな話題になりました。横浜市公
害研究所でNMR(核磁気共鳴分析)によって川の水を分析した結果、
このコイの大量死はPOER(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)とい
う界面活性剤が19ppm含まれていたことが原因とわかりました。
POERは、台所用合成洗剤やシャンプーなどに多量に配合されている
非イオン系の界面活性剤です。使用量が増えている非イオン系界面活
性剤ですが、水道法では水質基準が定められていません。