もっと知ろう!石けんのこと
「石けんと合成洗剤」長谷川 治
著
発行所 合同出版株式会社 より抜粋
石けん液に酢を入れると、瞬間、白く濁り、しばらくすると表面に油滴の
ようなものが浮いてきます。石けんの量に対し酢の量が少ないと、濁っ
ただけの状態になります。また、濃度が高い石けん液の中に酢を多め
に入れると、上層にどろどろ状の白いものが浮いてきます。これを「お
酢試験」といって、石けんかどうかを簡単に判別する方法として応用し
ています。
石けん(脂肪酸ナトリウム、または脂肪酸カリウム)に、酢(酢酸)を入
れると、アルカリ性のナトリウム、カリウムが酸性の酢と結合して中和
し、石けん(脂肪酸塩)は原料の脂肪酸(油脂)に戻ってしまいます。
酢がついた食器を、紙や布でふき取らずに直接石けん液で洗ったりす
ると、石けんが元の脂肪酸に変化し、皿やスポンジがべたべたになっ
てしまうのです。
では、台所用の合成洗剤液に酢を入れると、どうなるでしょう。白く濁り
も、油が浮いたりもしません。台所用合成洗剤は中性なので、酸性の
ものとは何の反応もしないのです。
1962年、間違って合成洗剤を飲んだ男性が、界面活性剤の毒性に
よって死亡するという事故がありました。合成洗剤は胃の中の胃酸(
塩酸)では何の変化も受けないので、生体影響を発揮するのです。
石けんは、間違えて飲んだとしても胃酸で分解され、脂肪酸と食塩に
なります。いわばドレッシングを飲んだのと同じ状態になり、とくに体に
異常は起きません。ただし、飲み過ぎれば下痢をすることもあります。
| 追加情報 石けんの原料である脂肪酸には、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、 リノール酸など、いろいろな種類があります。油脂と見た目は変わりません が、脂肪酸には独特のにおいがあるので区別できます。 油脂(脂肪酸トリグリセライド)は脂肪酸三つとグリセリン一つが結びついて できています。石けんはこの油脂中の脂肪酸とアルカリとが結びついてでき ますが、この時、グリセリンが副生されます。グリセリンは粘度が高く甘味が あり、保湿剤として皮膚用クリームに使われます。 |