もっと知ろう!石けんのこと
「石けんと合成洗剤」長谷川 治
著
発行所 合同出版株式会社 より抜粋
水と油をかき混ぜても、しばらくすると油が上に、水が下に分かれてき
ます。かき混ぜ方が弱いとすぐに分かれますし、強くかき混ぜて、それ
ぞれの液体を小さく分散させても、時間はかかりますが、徐々に完全
に分離してしまいます。
この現象は、水と油は溶けあわない性質をもっているから起こるので
す。そして油は水より軽いから上に浮いてきます。水の比重1に対して
油は約0・9です。
ところが、この水と油の中に石けんや合成洗剤などの界面活性剤を入
れてかき混ぜると、二つは混じりあって分かれなくなります。この状態
を乳化(にゅうか)と呼びます。
私たちの食卓には乳化状態になった食品がたくさんあります。これら
の食品には、乳化状態が続くように乳化剤として、界面活性剤が使わ
れています。
乳化の状態には二つあります。
●「水中油型」=水の中に油を乳化させているタイプ。表の層が水で、
その中に油が細かく分散している状態です。マヨネーズ、牛乳、乳液
などがこのタイプです。マヨネーズでは卵黄が天然の乳化剤の役割を
しています。マヨネーズはかんたんに作れます。
●「油中水型」=油の中に水を抱き込むタイプ。表の層が油で、その
中に水が細かく分散した状態になっています。このタイプには、マー
ガリン、バターなどがあります。マーガリンではレシチンやモノグリセラ
イドなどが乳化剤として使用され、バターでは乳タンパクが乳化剤とし
て働いています。
石けんや合成洗剤を水に溶かし、洗剤液を作り、この中に汚れた衣
類を入れて攪拌すると、衣類についている汚れの油分を界面活性剤
で水の中に引き出します。そして乳化作用で、汚れ(油)を水に分散
するのです。これは「水中油型」です。これが洗剤による汚れ落しの
原理です。