もっと知ろう!石けんのこと
「石けんと合成洗剤」長谷川 治
著
発行所 合同出版株式会社 より抜粋
通産省の統計によると、最近10年間の合成洗剤の販売量は年平均
100万トンにのぼります。日本人1人当たり年間9キログラム使用し
ていることになります。4人家族なら、1日100グラムほどになります。
100万トンというと、ゴミ収集車(2トントラック)で50万台分、東京ドー
ム3個分にも相当します。つまり、年間これだけの量の合成洗剤を河
川に捨てているのです。
日本では下水処理場はまだ全世帯数の半分程度しか整備されてい
ないので、合成洗剤は半分はそのまま水環境に捨てられています。
そのうえに、下水処理場で処理されている半分も、十分に分解されな
いことがわかっています。
このままでは、河川にますます合成洗剤の残留量が増えるだけでな
く、全国の湾や海の底にも蓄積されていくことになってしまいます。人
家が多い都市の河川では合成洗剤の残存量が高く、たとえば多摩
川では濃度が1〜2ppmにもなっていると報告されています。
この濃度は、メダカも棲めないといわれる濃度で、実際、東京をはじ
め日本中の河川で絶滅したか、極端にメダカの姿が少なくなってい
ます。自然の小川の改修、農薬などの影響とともに、合成洗剤がメ
ダカを絶滅に追いやる原因のひとつともなっているのです。
野生のトキを取り戻すことはもう不可能ですが、ついこの間までいた
メダカを私たちの身近な小川に呼び戻すことは不可能ではありませ
ん。
一方、石けんは、年間15万トンの販売量です。石けんは水環境に
出ると、水の中のカルシウムと結びついてカルシウム石けんになり
ますが、このカルシウム石けんは、微生物によって分解されたり、
小魚によって食べられたりして自然に消滅していきます。
ですから、日本の川や海では、石けんの残存量は検出されないの
です。