もっと知ろう!石けんのこと
「石けんと合成洗剤」長谷川 治
著
発行所 合同出版株式会社 より抜粋
石けんに使用される脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム以外の界面活
性剤が配合された洗剤を「合成洗剤」といいます。合成界面活性剤は
石油や動植物の油脂などを原料として、高温高圧のもとで、合成によ
って作られます。
第一次世界大戦中、ドイツにおいて最初の界面活性剤AS(アルキル
硫酸エステルナトリウム)が開発されました。そして第二次世界大戦
中、動植物油脂の不足を背景に、石油を原料にしたABS(アルキル
ベンゼンスルホン酸ナトリウム)という界面活性剤が開発され、戦後ア
メリカではこのABSにリン酸塩を加え、家庭用の合成洗剤が発売され
ました。
合成洗剤は、その誕生のとき原料の内容からソープレスソープ(石け
んが入っていない石けん。「石けんでない洗剤」)と呼ばれました。
日本では1950年(昭和25年)、アメリカからABSが輸入され、これ
を原料に合成洗剤が生産され始めました。電気洗濯機の普及とテレ
ビコマーシャルの効果で普及し始め、ついに1963年(昭和38年)、
合成洗剤の生産量は石けんを上回りました。
石けんでも合成洗剤でも、主成分は、汚れ落しの主役は「界面活性
剤」で、イオンの性質によって陰イオン系、陽イオン系、両イオン系、
非イオン系に分類されます。たくさんある界面活性剤のうちから、洗
剤としての適性を持ったものを選んで単独で、あるいは複数を混合し
て使われています。
合成の界面活性剤は登場したときから、河川に泡を立てたりする環
境影響、手荒れなどの人体影響、魚毒性の強さなどの生物影響が
問題視されてきました。現在では、環境ホルモン(内分泌かく乱物質)
の原因物質と疑われているものもあり、新たな社会問題となっていま
す。
テレビのコマーシャルでは「これは合成洗剤です」とは、決していわな
いので、粉状の合成洗剤を粉石けんだと誤解している人さえいます。